寒蝉鳴

 日中は真夏日の日が続いていますが、ところどころで雨も降ったりして、少なからずしのぎやすくなりつつはありますね。森に入るまでの道は鬱蒼とした草に覆われていて、それをかき分けるように進んでいきます。そういうのもあってこのクソ暑いのに長袖です。ちょっぴりダイエット効果も狙っています。

 手入れしてくださる方がいらっしゃるので、森の中はカラーンとしてはいるのですが、ジメッとしていてヤブ蚊に襲われます。でも今年はサラテクト虫除けスプレーでがっつりとバリアしていくので大丈夫。
 とは言えそのジメッと感がうっすら秋の訪れを感じさせるような気もします。夏の陽差しではなくやや薄暗かったりすると、アブラゼミやミンミンゼミではなくヒグラシやニイニイゼミの鳴き声が強く、自分の休みもあと少しかぁ‥‥なんてことも考えますし、いよいよ夏が終わるんだと思って、少々もの悲しくなってしまいますね。七十二候は「寒蝉鳴(ひぐらし なく)」。

 青々とまぶしくもあった森の中も、いつしか濃い緑、深い緑へと変わってしまい、どっちを向いても鮮やかだった景色は、ヘタするとモノトーンの世界でもあります。明るく撮れるようカメラの設定を一段二段調整して、ハイもう一度‥‥という感じ。

 羽化の観察をして以来、セミをわざわざ探してまで撮るのが申し訳ないような気がして、たまたまそこに留まって動かないでいたとか、たまたま飛んできたとか、そんなときだけです。
 折りも折り、小さな身体のヒグラシが目の前の木に飛んできて、逃げるでもなく鳴くでもなく、ジリジリと下がっていくだけだったので、ちょっと撮らせていただきました。
 もうひとがんばりだな‥‥なんて声をかけたくなります。

 鳴くからすぐわかっちゃうけど、保護色だからじっとしていれば目立たないのになぁ。もっとも、それではメスゼミが寄ってこないわけで、自然界はたいへんだな。
 保護色と言えば、一見鮮やかなカワセミも意外にわかりにくいんですよね。今年のカワセミはいつにも増して警戒心が強くて一筋縄ではいきません。ウォーキングのたびに川の様子を伺ってはいるのですが‥‥。
 でも、カワセミではなくて、ハッと気付いた風景がありました。滝平二郎の絵本に登場しそうな切り絵が描く水面の様子‥‥に見えません? 何だかここから物語が始まりそうな気がして、とりあえずカメラに収めてみたのでした。

 そうか、保護色かぁ。そういえばアブラゼミってスギやヒノキなんかに留まってるイメージが‥‥。ミンミンゼミやヒグラシはコナラやクリのような‥‥気がしてきたなぁ。スギの多いところ、コナラの多いところ、木の種類によって鳴き声に違いがあるかも。
 あ、保護色である理由は、オスじゃなくてメスの産卵のためか。セミって木の幹に卵を産み付けるんだそうですね、一個ずつ。その時に天敵から身を守るためなのかも。
 それから、その卵って次シーズンの梅雨頃に孵化して、表面に出てきて雨水に流されるようにやわらかい地表に落ちて、そして長い地中の生活が始まるんだとか。そうか、自宅庭のセミたちってそういうことだったのか。
 夏休みの自由研究、なかなか奥が深いなぁ‥‥。来年の梅雨は孵化したセミの幼虫を見つけてみたい。何だかセミの物語が見つけられるような気もします。もの悲しさじゃなくてどこかワクワクして来ちゃったぞ。(でもたぶん忘れる)