親父の一番長い日 5・いや二番目

 終わってみれば、あぁいい結婚式だったと、今は素直にそう思う。お世辞でもみんなもそう言ってくれてるし。
 その日が近づくに連れて、めんどうだとか、さっさと終わればいいとか、ネガティブな気持ちがやたら強くなるばかりだったけど、結婚式いいかもという気がしているところ。

 ものすごい費用がかかる。かけないでやる方法だってあるとは思うけど、こうして式場で普通にやるとどうしてもねぇ。もったいないと思ってた。今でもそう思うかな。
 おかげさまですっからかんだ。しっかり蓄えなどしてこなかった我が家はもう火の車である。今さらながらの現実‥‥。でも式や披露宴にはプライスレスのところもあるような気がする。そこは前向きに受け止めて、また仕事がんばっていこうと、まぁそんな風に考えるしかない。

 前日だったかな? 仕事で出かけた先で激サビ・プリウスを見た。パねぇサビ具合は信じられないくらいリアル。だからか、見たらラッキー!という話もないことはない。
 そう、激サビ・プリウスを見て式を迎えたのだからラッキーなのだ、幸運なのだ、いい一日だったもんなぁ。

 でもなぁ、披露宴の後に当日の御祝儀袋を全部開けて、それをほぼ丸ごと支払いに回してはい終わりというシステムがどうにも納得いかないというか、利用する側としては、別にありがたいとは思えないシステムなんじゃないのかな。終わっちゃったけど改善を求む。
 だってさ、新郎新婦は二次会が待っている。親にだって然るべき予定がある。ササッと終わることならまぁやむなしとも思うのだけれど、50分も押してしまった披露宴の後さらに1時間近く待たされてからのこと。今どきの華やかな御祝儀袋から祝い金を取り出すのに相当難儀し、金額の書いてない内封筒はちょちょっとメモしながらの作業。気がもめて気がもめて‥‥。
 また、数百万円の按分がどうだったか明細を見せてもらったりしたんだけど、請求額と合ってないような気がしたり、どんどん時間が過ぎていくばかり。この支払いの作業だけで1時間以上かかってしまったのだ。
 逃げも隠れもしない。1日2日後に精算したっていいじゃないかと思うの。細かいところキッチリ詰めて請求書きちんと作って、これだけのイベントなんだから、平日そのための時間くらい確保しますよ。支払いに来ますよ。振り込みだっていいじゃん。あぁいい結婚式だったと少なからず余韻に浸っていたのに、これですっかり醒めてしまう感じ。とにかく長い長い一日と感じてしまうのだった。

 それ以外にも細かいこといろいろあったけど、まぁそんなことは結局どうでもいいの。二次会が無事済んで、家に帰って着替えてホッとして、せいせいしたな‥‥とビールをプシュッ。終わったぁ‥‥。

 翌朝、休みだってのにさほど遅くなく目が覚めてベッドでゴロゴロしていた。
 そういえば、新郎の父じゃなくて新婦の父ってどうなんだろうとかふと考えてしまった。これまた今さらながらなんだけど、親父の一番長い日って歌を思い出してしまったのだ。
 歌詞を全部覚えているわけではない。ごく一部分、いやざっくりとしたシチュエーションしか出てこない。確か‥‥小さい頃の思い出話がいろいろあって、でもある日フィアンセが来て、ケンカ沙汰になって、許すけどブン殴らせろという結果だったような。そしてやがて式を挙げると。
 それ考えたら、何だか申し訳ないような気がして、でもそれ以上に、自分の娘はどうだったかという方にシフトしちゃって、思いっきり泣けてきちゃって、しばし布団かぶって肩震わせていたと‥‥。

 長い一日だった。でも一番長い日だったのは、新婦のお父さんだな。
 ありがとうございました。