啓蟄・しわ寄せ

 音楽とダンス、ではなく、唄と踊りが大好きだった伯母ちゃんが亡くなって、お通夜に伺ってきた。
 保険の外交員などやっていたからか、伯母ちゃんの声は元気で明るくて、いつもその場をにぎやかにしてくれていたような気がする。加えてマイペースで、今思えばいわゆる「鈍感力」をうまいこと発揮してたんだなぁと感心したり‥‥。

 家族の哀しみはいかばかりかとお察しはするけれど、お歳もお歳だし、みんなそれほど湿っぽくなくて、お通夜のあとの食事会に集まったいとこ同士、懐かしい話などで小さく盛り上がる。

 Mちゃんは還暦を過ぎて今年は61になるそうだ。へぇ〜。記憶にあるのは中学生くらいのMちゃんで、鼻たらし小僧の自分たちとは共通の話題がなかったような気がする。せいぜいトランプ遊びくらいだったかなぁ。
 どうにも思い出せない女性に飲み物を勧められ、お元気ですか?と話し込まれる。すでに劣勢、何とか自分から懐かしい話で切り返さなければと必死なのだが、どうにも思い出せずに降参した。まさかRちゃんだとは思いも寄らなかったが、そう言えばなるほどRちゃんだわ。そんな彼女は52歳。たいそうお兄ちゃんぶって遊んでいた記憶なのだが、こういう歳になるともう五十歩百歩なのだな。
 Kちゃんは同い年。仕事柄話しやすいらしく、ちょっとどうにかしてと今の職場に異動した経緯など愚痴をこぼす。いや、何とかしてほしいとは言ってないし、愚痴ではないかも知れないけれど、ゴールはこうありたいという思いはみんな似たようなもんなんだ。
 カメラ好きの伯父さんとカワセミの話になった。カメラを始めた頃、そう簡単じゃないよと言われたものだが、そう簡単じゃないけど何とか撮れるようになったかも。何ミリのレンズだとか絞りがいくつだとか意味不明だったけれど、今は少し酔ってる伯父さんの話を聞いても何となく言ってることがわかる。少しは成長したかな。

 いずれにしても、みんなパッと見は若いんだけど、近くで拝見するとやっぱ相応で、実家でキャーキャー遊んでた頃からもう40年以上経つわけだから、それだけのシワも増えて当たり前。亡くなった伯母ちゃんもすっかりシワだらけでとても小さかった‥‥。
 何の苦労もなく病気もせず若々しいままでいられるはずはなく、誰もが身体の至るところにそのしわ寄せが来てしまう。アイロンがけするわけにはいかないから仕方がない。
 こういうときにしか集まれないのも淋しいことだけど、みんな元気でやってることを確かめ合って、みんなこれを区切りにまた新しい一歩を踏みだしていこうと思うのだから、伯母ちゃんにはご冥福だけでなく感謝の気持ちも伝えなければならないな。

 季節は暦どおりに移ろい確実に春めいて、昨日も今日もあたたかで穏やかな連休となった。啓蟄の野山を歩いて春の訪れをいっぱい感じたいところだが、足腰がまだ本調子ではなく、歩こうとは思いながらもちょっと心配で自粛している。
 ウォーキングを自粛する一方で、まだまだ数カ月前の仕事をやっとやっとこなしているのが現実。こんないい天気の週末だってのに仕事漬けだったり‥‥。ふぅ。

 それはもうここ数年毎年のことと割り切ってはいるが、季節はもちろん世の中はそうして新しいシーズンに向けて正に動き出そうとしているのに、自分だけ取り残されて、自分だけ逆向きになって、この最後にうねうねと寄せ集まる“しわ”のカオスに身悶えしているかのようで悲しい。
 しわを伸ばしてアイロンがけして、きっちり仕上げないと自分の春はやって来ない。いわゆる帳尻合わせならすぐにでも終わるのだけれど、正しい答えはしわの一つひとつの中にあるからそう簡単ではなくて‥‥。まぁ自分の進め方も効率的ではないからなんだけどさ。でもここも少なからずブラックなんじゃないのかなぁ‥‥。

 さて、ヘッダ画像だけは啓蟄にちなんだものにしておいたんだけど、ブログ記事もやっとこさ3月になったなぁ。
 研究会も一段落して先日ささやかな慰労会をした。雛祭りにちなんでうすにごりをと思ったが在庫なしで新酒のあらばしり。いやいやこれはこれでいい酒で。

 一方で地元からは小沢の桜しぼりたて。
 この2本、なぜか同じような味に感じてしまったのはなぜだろう。どちらもさわやかでちょっぴり渋みを感じるような旨さ。酔っただけか‥‥。
 実はもう一本、大七・箕輪門までいただいたのだが、ん〜それもあまり違いを感じないままグイグイ飲んでしまった‥‥やっぱり酔ってるだけ。申し訳ない。
 最近の飲み会は、楽しくワイワイと終わるものだけど、お互いの考え方を率直に出しながら熱く語るって、やっぱり悪くはないなぁと思う。眉間にしわ寄せて、あぁめんどくせぇ‥‥とも思うけど、そのしわも穏やかになる瞬間、次の活動に向けてひとつでも・小さくても、こうしよう!が出てくるんだからなぁ。