思えば２年も過ぎたもんだ

復興に向けた団地の街並みは
　わがムラづくりへの足がかり

　いわゆる団地のようなものができるんだと思っていたんです。３階建て、４階建てくらいのものが。でもこうした戸建て住宅だったんですね。三春町にできた葛尾村の復興住宅。高台に公園も整備されていたのでちょっと登ってみましたが、街並みが一望できます。せっかくなのでパノラマ撮影してみたと。
　写真右側、大きくカーブする道路は右下の方へと続いては行くのですが、このあたりで舗装が終わり、元々の林道というか福聚寺の裏山へつながっています。工事期間中に何度か来てみましたが、いつもそのあたりで撮っていました。

　平成26年11月15日。工事が始まって２カ月くらいでしょうか。何か工事が始まった、復興住宅らしい、まぁ興味本位というのも否定はできなかったのですが、とりあえず行ってみたのでした。
　畑の広がるここはほとんど人の往来がなく、晴れた日などマクロ撮影とか空の様子・雲の様子などのんびり気兼ねなく撮るのにいいロケーションだったんですけどねぇ。そういう楽しみが奪われたような気がしてちょっと残念ではあったんですが、でも休耕してる畑も少なくないし、だったらこんな日当たりのいいところぜひ安心して暮らせるよう立派な住まいを建ててほしいもんだと思ったものでした。

　平成27年7月26日。ちょうど１年くらい前でした。梅雨明け宣言の青空。
　正面に伸びていた道路がなくなってしまい、もうすっかり土地勘を失ったような気分だったっけ。こうなってくると、さぁこのあとどうなっていくものかとものすごく楽しみになってきたんですが、毎週来て定点撮影ってもんでもないし‥‥。

　平成27年11月23日。勤労感謝の日。そんなつもりはないんですが、最初の写真からほぼ１年後。７月のときから思ったほど進んでいないような‥‥。国道側の方で見ると、工事車輌がずいぶん出入りして急ピッチでやってるんだろうと思ってただけに、来春完成なんてとても信じられなかったなぁ。

　そして昨日平成28年7月2日。なぜだか知らないけど、7月と11月とというタイミングで撮っちゃったんだなぁ、不思議。
　変わってないのは遠くに見える森と左手の電話用アンテナ塔だけ。大がかりな造成工事、道路整備、敷地造成まではたいへんだけど、家を建てること自体はそれほどの期間はかからないんですよね。この半年で一気に建ててしまっておおむね完成。
　今日も正にいつもの場所から撮ってみましたが、畑が広がるあの様子はぜんぜん感じられない。立派な住宅地になりましたねえ。
　あっという間だったような気はするけれど、振り返ればもう２年近く過ぎてしまったんですね。

　葛尾村は、６月半ばに避難指示が解除されました。村の九割の世帯が対象だとか。この日をどれだけ待ち焦がれていたことだろうと思うと、他人事ながら深い安堵感でいっぱいなんですが、さまざまな課題、厳しい現実がありますよね。これで元のような暮らしができるわけじゃない。ようやく復興のスタートラインに立ったようなものかも知れない。
　そこに暮らしていた人にしかわからないことなのであまり書きませんが、今になって思うのは、やっぱりそこが我が家なんですよね。荒れ放題の土地、仕事もなければ店もないからどっちみちマチに出てこなくちゃならない。不便極まりない。それでも「わげはいいなぁ」って思うんだよね。
　自分がそうだったらどうだろう。「わげさ帰っちぇなぁ‥‥」って思うと思うもん。
　この復興住宅を仮の住まいにしながらいよいよマチづくり、ムラづくりが始まるんだと思うんです。残念ながらみんながみんな帰れるわけではないから、だったら、ムラの真ん中に集まってコンパクトなコミュニティを構築していくというのも有りかなぁと思ったりもします。

　さて、カメラをぶら下げてこの住宅地を少し歩いてみました。そういうのってこういう場所では歓迎されませんね。あいさつしても返ってこない‥‥。仕方ない。
　そもそも、町内を普通に歩いていて元気にあいさつするのは、部活の高校生、そして小中学生。若い人たちは大丈夫。じいさん・ばあさんは耳も遠いから仕方ないとして、でも中高年のおじさん方はあいさつしないね。
　ま、物見遊山と言えばそうなんですけど、でも自分としては以前そうであったように、北側の林に沿って進んでいって真照寺に降りていくだけの話。その降り口を見つけてホッとするのでした。
　が、裏の池を改修していて、その風情の無さにすっかり興醒めしてしまいました。これも何とも仕方のないことなんだけど、秋の紅葉の頃までには、かつてのようなしっとりとした佇まいに戻っていることを願うばかりです。