秋分・雷乃収声

 すっきりと晴れ渡る青空に、キンモクセイの香りが広がる朝でした。こんな天気は久しぶり、何はともあれウォーキングです。

 季節はもう秋分なんですね。暑さ寒さも彼岸まで、雷の声も収まる頃だそうだし、もう残暑の心配も雷雨の心配もしなくていいのかな。収穫の秋、しばらくは穏やかな日が続いてほしいものです。

 秋の陽差しを名残惜しそうに、トンボがたくさん飛んでいます。ピンとしていた羽根がどこかクタッとしてきたような、どこか勢いがなくなってきたような気もします。虫たちもあとひとがんばりか、ちょっと寂しいなぁ。

 朝露に濡れた羽根を乾かしているのか、ただの日光浴なのか、石段に順序よく留まっていたりします。もう見渡す限りどこもトンボトンボトンボなのです。
 勢いよく飛んでいた頃はササッと逃げていたのに、今は肩や帽子に平気で留まっています。何だかね、そういうところが可愛いというか、そうそう、猫みたいだなとも思います。

 クルマで近くを通ったとき、遠くにふっと赤い色が目についたものだから、ウォーキングとは別に、ふらっと雪村庵に行ってみました。
 桜の頃は写真を撮りに訪れる人も少なくありませんが、それ以外はあまり‥‥ですね。近くに住んでいながら、実は自分も今日が初めてだったかもと、意外というか新鮮というか、不思議な気持ちでその佇まいに触れてきました。
 春、桜の頃はもちろん、冬のモノクロの風景もいいし、紅葉のこれからも‥‥。ここに雪村の作品があったらたくさんの人が訪れるのでしょうけれど、そうしたらこの物寂しい佇まいは味わえないからなぁ。ヒガンバナの赤が鮮やかでした。

 庵までの道がけっこう長いのですが、その途中にネコジャラシなどがいっぱい生えていました。西日に揺れて気持ちよさそうでしたが、雪村もこんな風景を眺めては愉しんでいたのでしょうかね。こんなものを描くことはなかったか。

 目につく赤と言えば、やっぱり同じヒガンバナなんですが、土手に群生しているところがあって、今年も行ってみました。
 見事に咲いていて気持ちが舞い上がってしまうほどなのですが、天気が良すぎて思うような色になってくれません。色だけじゃなくて、どう切り取っていいものか、やっぱりダメだなぁとガッカリして帰ってきました。
 また来年がんばります。

 さて、帰るか‥‥。緑や黄色、赤、見上げればまた青、いい季節です。ちょっとシャッターを切っただけのフレームに、トンボがたくさん収まっていました。